マーケティングシリーズ

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?

USJをV字回復させたコンサルタントと言えば、株式会社 刀(カタナ)代表取締役 森岡毅氏

森岡氏のモットーは「困ったら現場を歩け」

無いものを見るな!

アイデアは【ある物】から発想して生み出す

この考え方は、今後日本が抱える「人口減少」という課題に向き合う上で最も重要な考え方になります

2050年までに43%の自治体が消滅

2024年に人口戦略会議によって発表された報告書によると若年女性人口が2020年から2050年までの30年間で50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」と定義

このまま行けば2050年までに43%の自治体が消滅の危機に陥いるとしました

また国土交通省によると、日本の総人口は2050年には、約3,300万人、約25.5%減少して約9,515万人になると推計されています

65歳以上人口は約1,200万人増加する一方、

生産年齢人口(15~64歳)は約3,500万人、

若年人口(0~14歳)は約900万人減少するため、

高齢化率は約20%から40%へと約2倍に高まるとされています

人口減少は様々なビジネスに対して茹でガエルのようにジワジワとダメージを与えます

コンビニエンスストアは、爆弾渡しゲーム

例えば
コンビニの場合、商圏内の人口が3000人以上いないとビジネスが成り立たないという説が一般的ですが全国の自治体の約8割で1店あたりの住民数が3000人を下回っており、

ほとんどの店舗の商圏人口が標準を下回っており、その減少スピードは止まる事はありません

東京商工リサーチの調査によると 2017年のコンビニの倒産件数は51件(前年比24.3%増)で5年連続で前年を上回り負債総額は18億1,900万円

2021年1月には、コンビニのポプラが新型コロナウイルスの影響も拍車をかけて4期連続の赤字に陥っているとの調査結果も発表されています

コンビニエンスストアは、日本が抱える人口減少という闇の最たるものとなり、まさに爆弾渡しゲーム状態が予測されます

丸亀製麵ブランディング戦略

大衆うどんでおなじみの丸亀製麺も業績が低迷しており、将来不安を抱える企業の一つでした

そこで丸亀製麺は、2018年秋に1人の男にコンサルティングを依頼しました

その男は、森岡毅(もりおかつよし)

森岡氏が、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスと協業を契約したのが、18年秋。

丸亀製麺は森岡氏の腕によって2019年春から客数が増え、復活への道を歩み始めました

森岡氏は、丸亀製麵で一体何を行ったのでしょうか?

森岡氏曰く

刀の役割は「ブランドをつくること」で具体的には、消費者視点の調査・分析により、成功確率の高いブランド戦略を策定。

それを実行に移すために必要な組織改革、人事評価システムの変更や人材教育などを行い、

契約期間終了後も持続可能なマーケティングノウハウを丸亀に移植します

丸亀製麵の問題点は何だったのか?

丸亀製麺には、ブランディングという概念が希薄だったことだと森岡氏は言っています

そのため客数は次第に減少。

単価の高いフェア商品などで対処してきましたが、それも有効な手立てにならず、抜本的な見直しが必要な状況でした

粟田貴也社長が創業時から掲げている哲学「出来たての感動を届けたい」は本当に正しい

実際にすべての店内で粉から麺を手作りし、出来たてのおいしさにこだわり抜いてきました

原料は「国産小麦、水、塩」のみで、保存料や表層的に食感を増す混ぜ物なんて一切使わない

ところが、最大のブランドエクイティー(資産)であるこの特徴が、消費者に十分に届いていなかった

来店客でも知る人は5割未満でした

そこで19年1月からCMで「すべての店で、粉からつくる。」と他社に無い圧倒的な強みを訴求することにしました

言わば原点回帰

こういった事は、丸亀製麵に限らず多くの外食企業が陥る問題です

一般にうまくいったブランドでも寿命は20年、企業の平均寿命も30年程度です

人の好みにははやり廃りがありますし、人気店が生まれれば、他社が参入し、その結果、価値を生まない競争によって業態全体を陳腐化してしまう

徐々に客数が減る流れのなかで、伸び悩む売り上げ対策として客単価を上げようと高価格のメニューを増やしたり、

あるいは逆に価格を下げたり、1杯無料にするキャンペーンを打ったりして客数を増やそうとしますが、そういう小手先の企画は、ブランド価値を毀損するだけです

中長期的な視点に立ってブランドを構築するという根本治療をしないといけない

マクドナルドやスターバックスのような長寿企業はみな、明確なブランディングで危機を乗り越えてきました

20周年を迎えた丸亀製麵も、ちょうど分岐点に来ていたのでしょう。

USJをV字回復させた森岡毅の実戦マーケティング

さて、森岡剛と言えば、誰もが知っているあのユニバーサル・スタジオ・ジャパンを劇的にV字回復させた人物として知られています

ユニバーサルジャパンと言えば、世界に4箇所開業しています
ハリウッド、フロリダ、大阪、シンガポール
大阪の開業費用は、1250億円
2001年3月31日にオープンして初年度に世界最速で入客数1000万人を超え1100万人が来場し大いに話題となりましたが、翌年の2年目には763万人と約350万人減少しました。
2001年:1102万人
2002年:763万人(69%)
2003年:988万人(129%)
2004年:810万人(82%)
事実上の経営破綻にて社長交代
2005年:831万人(84%)
2006年:869万人(105%)
2007年:864万人(99%)
2008年:813万人(94%)
2009年:750万人(95%)
2010年:730万人(97%)

USJの来場者数は開業から翌年が急激に落ちています。
その原因とされているのが翌年に起こった3つの不祥事です。
1-アトラクションの火薬を超過使用していた事が発覚。
2-工業用と飲料用配管が繋がっていた問題。
3-期限切れ食品の提供
この様な不祥事が相次いで発覚した事で来場者数が見る見る落ち込んで行き3年後の2004年には事実上の経営破綻
そこで本家のユニバーサル社からグレンガンペル氏が送られて新社長として就任
グレン氏は徹底したコスト削減をする事で経営破綻の危機をギリギリの所で免れていましたが、肝心の来場者数は低迷したままでした

そこで2010年に森岡氏をマーケティング部長としてヘッドハンティングしたのです

業績の低迷理由

森岡氏は、幹部社員に業績低迷の理由を分析させました
その結果2つの仮説が出て来ました。
1つ目は、開業2年目に起きた不祥事がブランド価値を低迷させている
2つ目は、TDRとの差別化が出来ておらずTDRに客を取られている
一見最もらしい仮説ですが森岡氏がこの2つの仮説をどちらも違うと一刀両断しました

【1つ目の仮説】

8年も前の事を客は引きずっていない

不祥事が起きたから客が減ったのではなくて

客が減ったから不祥事が起きたのだ。とこの仮説を否定

【2つ目の仮説】

USJとTDRの間は凄く離れており差別化する必要が無いとし、これも否定しました

遠方のユーザーをターゲティングするのではなく関西エリアの地元ユーザーを集める事が成功の「鍵」だとしたのです

つまり灯台下暗し

足元人口から攻めるという事です

そして森岡氏が今のUSJの問題を明らかにして行きます
1つ目の問題は、テーマです
当時USJは、映画だけをテーマにしてTDRと差別化を図ろうとしていました
映画に絞り込む事でマーケットサイズを小さくしていると考えたのです
映画のテーマパークからアニメ音楽ゲームと様々なジャンルの中で最高の商品を選定することで世界最高のセレクトショップをテーマにしたのです
次に
長期戦略(3年後以降)
中期戦略(3年後まで)の戦略を考えました。
長期にハリーポッターを行うと決定しましたが建設費などに450億円の投資費用がかかります
(当時のUSJの売上は750億円)
これを決定した事でハリーポッターまでの3年間は予算がほとんど残らなかったのです
そこでいかにお金をかけずに集客するかという【アイディア】が必要になったのです
お金をかけずに集客する方法、アイディアを考えなくてはいけません
しかもハリーポッターが開業するのは3年後
森岡氏は、かつての師匠の教えを思い出しました

困ったら現場を歩け、答えは必ず現場にある

森岡氏は、この言葉通りに朝から晩までずーーーと現場を見て歩き、時に同じ場所で数時間もボーっと立っていました
そしていくつものヒットイベントを生み出して行きます

2010年
ワンピース、モンスターハンターとの新コンテンツ導入

2011年春
キッズフリーパス
大人1人につき子供1人が入場料無料

2011年秋
ハロウィンホラーナイト
USJは元からハロウィンイベントを行なっていましたが7万人程度のプラス集客しか達成しておらず実質赤字イベントだった所を森岡氏がゾンビをパーク全体に広げるというアイディアからコストを使わず2ヶ月でプラス40万人の集客効果を出しました。

2012年
ユニバーサルワンダーランド
新ファミリー施設
パーク内に点在していた子供向けアトラクションを一箇所に集めてファミリー施設を作りました。
家族連れが少ない事が課題であったUSJと持ち出しの資金が無かった事で考えた施策です。

そして2013年
後ろ向きジェットコースター

無いものを見るな!

アイデアは【ある物】から発想して生み出す

【今ある物で何とかしよう】と思っていなければこのアイディアは浮かんでいませんでした

このアイディアで最長9時間40分の並びが出た程のヒットイベントでした

この年はTDRの30周年とバッティングしていましたがUSJは祈願の1000万人を突破してTDRとの差別化が不要であったと証明したのです

2014年
ユニバーサルクールジャパン
エヴァンゲリオンを中心としたアニメキャラを集めたイベント
そして同年
遂にハリーポッター開演
USJは、5年で660万人以上の集客UPを行いましたがうちハリーポッターでの集客は260万人程度と全体の約4割でした

残りの6割は、お金をかけないアイディアで資金を稼ぎ、各分野で最高の版権とコラボして行くという施策を無数に打ち続けたのです

森岡氏は、2010年に入社して2017年に退社するまでの7年間で64個のイベントを行いました

2010年:730万人(97%)
当時38歳であった森岡をジャンプーの会社からヘッドハンティング
2011年:880万人(120%)
2012年:975万人(110%)
2013年:1050万人(108%)
2014年:1270万人(121%)
2015年:1390万人(110%)
2016年:1460万人(105%)
2017年:1500万人(103%)

その打率は、64打数63安打
打率9割8分4厘
本塁打率51%
投資を回収した物を安打
期待値を上回った物を本塁打としています。
何故これほどの打率になるかと言えば、確率思考も戦略論です
つまり、勝てる確率が高い戦いをしているという事
森岡氏は、ビジネス戦略の成否は確率で決まると断言しています
成功確率を上げる方法は、無意識に情緒的な決定をするのではなく合理的に準備して戦う事だと言っています

目に見えている物に惑わされず

本質を見抜く力が最も重要です

物理的に目に見えている物は、ほぼ全て現象です
その現象を作り上げているのは本質ではありません
現象に向けてアクションを取ったとしても問題を解決出来ません
その現象を作り上げている本質的な原因を見つけ出さなければいけません
ヘアケアー商品を取り扱って業界NO1の地位にあった企業がそのシャンプーのビジネスでシェアが下がってしまった事があります
マーケター達が原因を分析した所、競合他社の商品価格が下がった事で自社商品の価格が上がっていた事を突き止めました
しかし森岡氏曰く
シェアが下がったというのは現象に過ぎないし、平均価格が上がってしまった事も現象にすぎない
よって平均価格が上がってしまった「原因」を追求しなくてはいけません
こうして、何故?何故?っと現象から原因を掘り起こし、更に何故?っと自問する事で問題を作り上げてきた「本質」が見えて来ます

一見何気ない現象からも何故?と思う癖を見つける事が重要
人の手は何故2本で足は何故2本なのだろか?
自分の頭は何故他の人よりも大きいのだろうか?
何故?何故?っと本質まで掘り下げて行くとDNAまで辿り着きます
DNAという核を基本にして自身の身体の構造を作り出しています
これは人だけでは無く犬でも猫でもバナナでもその仕組みは同じです
バナナのDNA遺伝子は50%が人間と同じで
人間とバナナの本質が同じDNAを核にしているという事実
サルと人間で言えば99%が同じで違いはたったの1%
しかしそのDNAの違いによって現象が異なるという事実

サンフランシスコのダウンタウンにいる客引き兄ちゃんと日本の客引き兄ちゃんは、醸し出す雰囲気や顔つきなどが非常に似ており
日本の銀行員とアメリカのBAKの従業員も似ています
トラックの運転手、建設業のブルーワーカー、土木作業員、国境や人種が違うのに「職業」が一致していると凄く雰囲気が似て来るのです

今でこそスーツで身だしなみを整えて、ハイテク機能を使いこなす店長が支流になったが一昔前のパチンコ店の店長は、皆パンチパーマでイカついおじさん達ばかりでした

この「現象」には「本質的な何か」があるはずだと森岡氏が言います

仕事の性格によって人間の属性を振るいにかけると目には見えない仕組みが社会にはあるのだと思うのです
人は仕事を選ぶけれど、仕事も人を選んでいるという事に他なりません

衣食足りて礼節を知る

例えば、一昔前の出前は配達した食器を後日回収に行くのですが、失礼ながら貧乏そうなお宅の回収では、

お皿にタバコの灰が入っていたり、ティッシュペーパーなどのゴミが入っている事が多いのに対して、

お金持ちそうなお宅の場合、きちんと洗われ返却される事が多いそうです

ビジネスにおいても人間関係においても、「相手の気持ちになって考えて行動する」事は成功への近道になります

しかし10人十色、人はその属性によって振るいにかけられ目に見えない仕組みによって、職業や社会やビジネスにおいてそれなりの所に落ち着いていく。

国や人種が違ってもよく似た人種が一定の仕事に付いて社会全体として一定の構図に収束していくのではないだろうか。

資本主義の本質は欲望

森岡氏は、資本主義の本質は欲望だと定義しています

資本主義社会とは、人間が持つ【欲望】というDNAを核にして様々な現象を生み出しているのだと

この考え方を元に自分が戦うマーケット、市場構造、ストラクチャー(全体)の本質が何なのか?

つまり、市場構造を形作っているDNAの正体に迫ります

市場構造の本質さえ解れば、その市場で勝つ為の戦略を【何処に集中】するべきか、そしてそれは何故なのかがはっきりと見えるようになります

市場構造を理解する事でヨットが風を使って前に進むように市場のエネルギーを利用して前に進む事が出来るようになります

あなたが初めて車を運転するとしたら

先ずは、ハンドル、アクセル、ブレーキ、トランスミッション、と車の構造を理解しない限り鍵を回してエンジンを掛けませんよね

あなたのお店が壁を越えないのは、思考の偏りや、こだわりです

例えば、ペットボトルのお水の価値は幾らだと思いますか?

100円〜150円ぐらいでしょうか?

しかし、激安スーパーに行けば60円、イオンなら100円、自動販売機なら130円、コンビニなら160円、ナイトクラブなら500円、高級クラブなら1,500円、

富士山の頂上で水を売ったら?

砂漠で水に困っている人に売ったら?

パチンコ店の店長が年収700万円だとして、その店長がタクシーの運転手に転職して年収700万円稼げるでしょうか?

つまり

どう戦うかではなく、何処で戦うかが重要です

市場を分析して市場構造、ストラクチャーを理解した上で数学的根拠を元に論理的かつ柔軟に勝てる施策を絶え間なく打ち出す事が繁盛店を作っていく上で重要な事なのです

森岡氏はUSJを「映画だけの専門店」から「世界最高のセレクトショップに生まれ変わらせた経緯について、最も大切なことは作り手の間違ったこだわりではなく、

消費者がUSJのチケットを「買う確率」を純粋に高くする方法だと言っています

そして最後にこう綴ります

【困ったら現場を歩け、答えは必ず現場にある】

 

最後までご覧いただきありがとうございます

代表取締役 松田修身

2000年 中部大手法人入社

2014年 エリア長職就任

2020年 稼働ランキング日本一達成 退社

同年 プランニングオフィス 設立

2024年 BRAINDIVE株式会社 設立

現在 ご支援店舗70店舗を突破

業界初!新感覚【無料顧問】

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