人口オーナス期(減少)を迎えた日本において売り切り型のビジネスは近い将来限界を迎えます
これから日本国内でビジネスを成長させていくためには、集めてから広げるという視点がとても重要になります
この記事では、近い将来限界が訪れる、もしくは既に限界を迎えている売り切り型のビジネスモデルから、
グロース(成長)モデルへの変換をさせるヒントが見えてきます
ビジネスとはモデル(仕組み)さえ分かってしまえば応用は意外と簡単なので最後までお付き合い下さい
集めて教育して売るDRM
集めて教育して売るという最も主流なマーケティング方法はダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)になります
【ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM:Direct Response Marketing)】とは
「見込み客から返信(レスポンス)をもらうことを前提にしたマーケティング手法」
ワンステップでいきなり商品を販売するのではなくまずは「商品に興味のある人」に商品の詳しい説明をした上で
「商品に興味のあった人」見込み客に対して販売というセールスを行うことで効率的に成約へと繋げていく手法
例えば
再春館製薬所が提供している「ドモホルンリンクル」のCMは、商品の販売を目的としておらず
「無料お試しセット」へのお申し込みを目的として作られています
つまり、美容に興味がある、商品に興味のある顧客のみを抽出して、その抽出した見込客に対して販売活動を行います
その他にもCMの最後に電話番号を強調する、Webサイトで詳細を知りたい方に資料請求をしてもらえるようにするなどがそれにあたります
DRMの仕組み
ビジネスにおいて自社のプロダクト・サービスを販売しようと考えた場合、まず最初に行うには認知活動になります。
Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、メルマガ、会員登録、SNS、HP、LP、TVCM、ラジオCM、折込チラシ、ポスティング
これ等を活用して企業は自社のプロダクト・サービスの認知を広げる活動を行います
ただ、企業が販売したいプロダクト・サービスの認知を広げただけでは商品は売れません
次に取り組む施策が教育というステップになります。
何故あなたの会社からそのプロダクト・サービスを購入しなければいけないのか?
他社との違い、強み、魅力、どいうい人が販売しているのか、理念、想い、などを知って頂くことが教育ステップです
Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、メルマガ、SNS、HP、LP、TVCM、ラジオCM、折込チラシ、ポスティング
これらの認知活動から、自社のHP、LP、ブログ、個別問い合わせ、など教育ステップを終えて顧客は購入と行動に移ります
つまりダイレクトレスポンスマーケティングとは
【認知】【教育】【販売】の3つのステップで構成されており、日本で1番使われているマーケティング手法になり大きな売上を作る事ができるマーケティング手法です
グロース(広げる)という視点が必要
サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)をサービスにしたいわゆるプラットホームなど商品そのものが形を成していないものの場合は、広げるという視点を取り入れたマーケティング概念が必要になります
特に企業のデジタルトランスフォーメーションが加速する現代
顧客を行動ベースで理解し、さらに顧客体験を高めるための施策を「素早く」繰り返し打つことで
定着率を向上させ、ロイヤルティ化を促進し、ビジネスをグロース(成長・広げる)させるという新しい考え方が必要になります
インターネットが普及した現代ではモノの売り切り型から、サービス提供型
すなわちサブスクリプションへとビジネス形態が変化してきています
例えば、オンラインサロンなどは代表的なサブスクリプションビジネスになります
サブスクリプションビジネスは、プロダクト・サービスの単価を低く設定する代わりに長く使って頂くというものが多くなります
ただ初期投資が少ないため顧客は他のサービスへの乗り換え行動が容易になります
企業側は、新規の顧客獲得よりも、いかに継続してプロダクト・サービスを利用いただき
ライフタイムバリューをあげつつ広げていくかに比重を置くようになります
トップファネルからボトムファネルへ
ファネル(漏斗の意)とは、広く集客したうえで、ふるいにかけられた見込み顧客が、検討・商談、そして成約へ流れる中で段々と少数になっていくことをいう
その様を図にすると、漏斗(じょうご)で濾した様子に似ているところからそう呼ばれている
一般に、商品・サービスの購買過程をフェーズ分けしたものをモデル化したものである
これまでは、DRMを代表とするマーケティング手法で新規獲得にあたるファネルの上半分(すなわちトップファネル)が重視されてきました、
【認知】CMや看板広告、ポスター、SNS、ネットなどで認知
【興味・関心】商品のことが気になり、商標に反応するようになる
【比較検証】商品について検索する
【購入】商品や付加サービスを購入する
━━━トップファネル━━━
新規顧客を獲得し、初回売上を上げる
しかし、これからの時代では
【継続】継続購入
【紹介】商品・事業のファンになる
【発信】SNSなどで共有する
━━━ボトムファネル━━━
既存顧客のカスタマーサクセスを追及することでリテンション(継続率)を向上し、結果的にLTV(顧客生涯価値)を高めるという考え方
既存顧客のリテンションを向上し、ライフタイムバリューを高めるため、ボトムファネルが重視されます
ライフタイムバリューを高めるには解約されないようにしなくてはなりません
解約されないということは、顧客に「必要とされるプロダクト」「必要とされるサービス」だということです
常に必要とされ続けるためには、プロダクト・サービス自体も成長もしないといけません
プロダクト・サービスの持続的成長「グロース」にフォーカスしたマーケティング活動がグロースマーケティングなのです
成長し続ける企業とはこの視点に重きを置いています
この考え方は、何もプラットホーム型ビジネスモデルだけに役立つ手法ではありません
例えば
【認知:100人】離反率50%
【興味・関心:50人】離反率50%
【比較検証:25人】離反率50%
【購入:12.5人】
━━━トップファネル━━━
【継続:8.75人】離反率30%
【紹介:】紹介率〇〇%
【発信】拡散率∞
━━━ボトムファネル━━━
上記を見て頂ければお分かりのようにどんなビジネスにおいても
このボトムファネルを重視したマーケティングに切り替えていく方が生涯利益が向上するはずです
既にIT大国アメリカではGAFAMなどがこのボトムファネルを重視したマーケティングを行っています
例えば
Facebook、Instagram、YouTubeなどは、トップファネルでの販売を目的としておらず、いかに無料で長く使って頂くかにサービスを特化させています
顧客は利用料金の代わりのこのサービスを利用する事で「時間を消費」しています
プラットフォーマー側は、消費者の時間を拘束し、目標時間に到達してから広告枠を広告主に販売するというビジネスモデルになります
グロースには顧客理解が最も重要
ギターの世界で二大巨頭と言えばフェンダー社とギブソン社ですが、この2社の明暗が分かれた事例があります
フェンダー社は1946年に創業したアメリカの老舗ギターメーカーでプロアマ問わず多くの顧客から支持されています
音楽愛好家では知らない人がいないほどの知名度があります
一方のギブソン社はもっと古く1902年設立のギターメーカーです
日本でも椎名林檎氏やB’zの松本孝弘氏などのミュージシャンに愛されています
しかし時代と共にギターブームは影を潜め業界はシュリンクしています
DJ音楽のブームや木材の高騰などによって、両社ともに多額の負債を背負う形になっていたのが現状です
マーケットのシュリンクという窮地に対して、両社はどのような戦略を練ったのでしょうか
モノの生産・販売にこだわり続けたギブソン社
エレキギターのマーケットシェア率が約20%
5本に1本はギブソン社のものであり、高価格帯に限れば40%のシェアを誇っていました
しかしギターの需要低下につれて2012年から方向性を一転し、周辺機器メーカーの買収に取り組みだします
日本のオンキヨーやティアック、オランダのフィリップス傘下で香港本社を置くWOOX Innovationsなどを次々とM&Aしました
しかし顧客のニーズは「モノの消費」ではなく「コトの体験」へと移り変わっています
レコードやCDプレーヤーの需要は徐々に薄くなり、反対に音楽フェスやライブは増加しました
「モノの製造・販売」にこだわったギブソン社は2018年の5月に5億円の負債を抱えて破産申請をしました
顧客理解を深めたフェンダー社
フェンダー社もここ10年で売り上げが3分の2にまで減少していました
2012年時点で負債は2.4億ドルと後退していたのが現状です
そこでフェンダー社は1年の歳月をかけて顧客のデータと感情を分析しました
すると売り上げのほぼ半分が初心者によってもたらされていることが判明したのです
また初心者のうち10日以内に挫折する人が70%、1年以内に挫折する人が90%という事が明らかになりました。
あなたも布袋やB’zに憧れた中2病というギターが欲しくなる病気を経験したことはないだろうか?
ギターを経験された方ならお分かりだと思いますが、ギターは単純に難しく中々上手く引けるようにならず、直ぐに挫折してしまいます
しかし、挫折せずに残った10%の顧客は長期にわたってフェンダー社の製品を使い続けてくれる事も分かりました
加えて挫折しなかった顧客は、ギターの3倍以上のレッスン料を払う事もデータから判明しました
このデータを元にフェンダーのCPO(最高個人情報責任者)であるイーサン・カプランは「挫折させないこと」を重視しました
壁を乗り越えてもらえば、顧客はギターを長く楽しめる
そこで2017年の7月に初心者用のレッスンを動画で受けられるサービス「Fender Play」をリリースしました
月額19.99ドルを払えば空いた時間でカリキュラムを進められるサービスです
サービス内では、モチベーションを下げさせないような工夫などが沢山あり挫折しづらいように設計されています
フェンダー社は、「大切なのはギターを売ることではなく、楽器を通じて顧客と対話をすることだ」と言っています
業界がシュリンクを始めて売上がどんどん落ちている時に継続率10%の顧客に対して周辺機器を買収して巻き返しを図ったギブソン社
逆にギターを辞めてしまう90%の顧客、継続すればギターの3倍の料金を支払う顧客にターゲットをシフトしプロダクト・サービスを開発、販売したフェンダー社
まさにこの2社の命運を分けたのが【個客理解】だったのです。
Instagramは失敗作だった
2014 年12月Instagramは月間アクティブユーザー数が3億人を突破し1日に7,000万件を超える写真や動画がシェアされていると発表
しかしInstagramは元々位置情報アプリ「Burbn(バーブン)」というアプリだったのです
アプリの役割は、GPSを使い位置情報にチェックインしたという記録を共有できるサービスでした
【位置情報+写真】というアプリです
例えば企業が営業マンにそのアプリをダウンロードさせて、しっかりと営業に行っているかを写真を付けて報告させるなどという使い方も想像できる
ただリリースからBurbnを利用する数名のユーザーが何度も使ってくれたがその他のユーザーはすぐに去ってしまう状況だったそうです
その結果に対して、何故長く使ってもらえないのかのデータを分析しました
すると、位置情報にチェックインして、その場所の写真をアップするという使い方よりも
写真プラス位置情報として利用されている事が分かりました
つまり顧客が満足していたのは、位置情報ではなく、写真(カメラ機能)の方だったのです
これを受けて写真+位置情報という逆の発想にアプリを改修して再リリースを行った所1週間で100万ダウンロードを達成しました
Facebookは女子の人気投票ゲームだった
Facebookを直訳すると「顔本」になるマーク・ザッカーバーグは17歳の頃にハッキングして得た女子学生の身分証明写真をインターネット上に公開し、
女子学生の顔を比べて勝ち抜き投票させる「フェイスマッシュ」というゲームを考案した
これは大学内で問題になりザッカーバーグはハーバード大学の半年間の保護観察処分を受けるに至ったそうです
しかし、ザッカーバーグはフェイスマッシュのデータを分析して学生達が大学での繋がりを求めて、その繋がりに満足をしているのだと気が付きました
そして2004年ザッカーバーグはフェイスマッシュを改修しハーバード大学の学生が交流を図るための「ザ・フェイスブック」というサービスを開始しました
あなたのプロダクトやサービスが売れても広がっていない場合、顧客(市場)とのズレがあるかもしれませんね
個客理解とは顧客行動理解
これまで顧客を分析する際には
デモグラフィック(人口統計変数)サイコグラフィック(心理的変数)といった属性の分析が主流でした
しかし変化の速い時代に、より具体的な顧客理解を行うためには行動に基づいた分析が必要になってきています
さらに顧客の理解にもレベルがあります
定点観測、課題探索で過去を分析するだけではなくそこからどんなマーケティング施策を実行するべきか
ネクストアクションを導き出すのが真の意味での行動理解と言えます
インターネットが世の中に登場してから利用者が1億人に達するまでには、8年を要しましたが
ポケモンGOはなんと3日で1億人に到達しました
こうした変化の速い時代において、従来型のPDCAサイクル(品質改善モデル)では状況の変化に対応できません
そこで、OODAループ(思考決定モデル)の考え方で、まず観察し、そこから試作を試し
結果を見てすぐに修正していくというサイクルを高速に実行することが重要になります
P 計画
D 実行
C 評価
A 改善
━━━━━━━━
O 観察
O 方向付け
D 決断
A 行動
実際に革新的なグローバル企業は、年間1,000回以上も様々な施策を繰り返すことで成長=グロースを続けています
グロース視点に変える
これまでのビジネスの指標は、売上や受注といった指標のみで
ユーザー体験や満足度が考慮されておらず企業目線の指標ばかりでしたが、
グロースに取り組んでいる企業は、ユーザーの満足度を考慮した指標ノーススターメトリックを設定しています
North Star Metricは「北極星指標」の意味を持ちます
ひとことで定義すると「チームの目標と方向性、そして成功を計る尺度」です
世界の指標設計ではKGI(重要目標達成指標)に対してKPI(重要業績評価)を設定することが一般的でしたが
KGIとKPIの距離が遠く連動性が図れないという課題がありました
ノーススターメトリックはの両者の間に位置しプロダクトの価値がユーザーに届いているかを測る指標となります
ノーススターメトリックを設定すると、目指すべき方向性が具体的に示されることでプロダクトの成長速度が加速します
グロースマーケティングとはデータを重視します
データを使ったマーケティングは、ためる、整える、分析する、使う、の流れで進めていきます
このプロセスでは分析することからはじめます
既にデータをお持ちでもデータ活用できないというお話しをよく聞きます
自社の顧客を行動起点で理解することから、グロースマーケティングが始まります
日本の人口は、人口オーナス期に突入しています
2004年1億2784万人(高齢化率19.6%)
2030年1億1522万人(高齢化率31.8%)
2050年 9,515万人(高齢化率39.6%)
2100年 4,771万人(高齢化率40.6%)
これまでのマーケティング手法では人口減少を続ける日本社会で生き残っていくことは年々難しくなります
これからは顧客理解を深めてグロースという視点を持つことが大切になっていくでしょう
まとめ
集めて売るという売り切り型ビジネスモデルから、集めて広げるというグロース型ビジネスモデルへの転換
トップフェネルから、継続、紹介、発信のボトムファネルの仕組みを構築
カセット、CD、DVD、などのモノ消費からコト消費へ
所有から体験・経験・サブスクリプションなどの権利型へと顧客の購買行動は時代と共に変化しています
変化にいち早く気づくためには【個客理解】が必要でした
個客理解とは顧客行動理解とイコールであり、
変化の速いこの時代において顧客行動理解を深めるためにはこれまでのPDCAサイクルモデルではなく
観察、方向付け、決断、行動という思考決定モデルを高速で回していく時代です
人口オーナス期に突入したこれからの日本ビジネスにおいてDRMからグロースマーケティングへの転換期が訪れています
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